2014年5月20日火曜日

森の中49

(昨日のつづき)

暖かい風が吹いて、庭の木にとまっている鳥の声や、カチャカチャとお皿やカップを片付ける音が聞こえる。目の奥の少しの痛みは、じんわりと熱を帯びて、S子の瞼は自然に閉じてしまった。目を閉じたS子の耳にマキの声が聞こえてくる。
「あら、S子さん、寝ちゃったの?」
「眠ってないんだけど、泣き過ぎたせいか、目の奥が熱くて、目を開けてられないのよ」
「ちょっと、ゴメンなさいね」
とマキの手がS子の瞼をグッと開いた。開いた瞼の中には赤い目があった。S子は世界が真っ赤になっている事に驚き、思わずその手を振りほどいた。再び、瞼は閉じた。S子の目は内からも外からも赤くなっていた。
濃い赤のザクロ石。

(つづく)

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