2014年5月19日月曜日

森の中48

(5月15日のつづき)

メイン通りから細い路地を右へ左へと抜けて、緑の畑の中の小道を、老夫婦の後を歩きながら、S子の涙は流れつづけた。蔦で覆われた家の前に着いたときには、タオルはぐっしょり濡れていた。後から走って来たマキが三人に追いついた。ふうふうと息を切らしてた。おじいちゃんは裏庭の方に行った。おばあちゃんとマキとS子は玄関から家の中に入った。家の中に入ったら、おばあちゃんは台所へ、マキとS子は縁側に行って腰をおろした。マキは屋台で買って来た食べ物の包みを膝の上でほどいた。三角に切った野菜や肉を串に刺して焼いた料理と笹の葉で包んだ三角のおこわ飯が出てきた。おばあちゃんがミルクの入ったお茶をもってきて、マキの横に置いて、自分もその隣に座った。マキはS子にお茶を渡した。S子は泣きながら、お茶を受け取るとコクコクと飲んだ。何かのスパイスの味がした。S子の涙がピタッと止まった。
「あ、止まったわ」
「ああ、良かった。さ、これ、食べましょう」
そこに、おじいちゃんが何種類か果物を持って庭の方からきて、おばあちゃんの横に座った。四人は縁側に横並びに腰をおろし、庭を見ながら、いろいろ食べた。庭にはいろんな草花が好き勝手に生えていたが、調和が取れていて、爽やかで、美しかった。
S子は目の奥に少し痛みを感じていた。

(つづく)

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