2014年4月28日月曜日

森の中42

(4月24日のつづき)

 A子とカンは、二度目の帰り道、銀色に揺らめく月に照らされながら無事に家に辿り着いた。今度はちゃんと皆の『お帰りなさい』という声に迎えられた。二人はヘトヘトで目も開けていられないほど疲れていたが、同時に夜食のうどんの出汁の匂いにお腹が痛むほど空腹でもあった。二人は皆が見守る中、温かいうどんを眠りそうになりながらも平らげると『ごちそうさますみなさい』とフラフラと立ち上がり、フワフワと子供の寝室に歩いて行った。やっと帰って来た二人が、黙々とうどんを食べている様子を半ば呆れ半分で眺めていた家族は、二人が居間を出ていく背中を見ながら大いに笑った。そして、自分たちもそれぞれ眠る事にした。
 A子は眠ってからも、夢の中で、森の中を、口からコポコポと光る水の泡を吐きながら歩いていた。
そのせいで、明け方頃には子供たちは全員ぐっしょりと水に濡れていた。部屋の床にも3センチくらいゆるゆると水が浸っていた。でも、マキさんが「朝ご飯だから起きなさい」とドアをノックして、A子が眼を覚ますと、水はスッと床に吸い込まれた。濡れていた子供たちの服もほとんど乾いた。ただ、袖口やズボンのゴムの部分が少ししっとりして、身体もヒンヤリとして手のひらもふやけていた。でも、大きい子供たちは『寝ているときにたくさん汗をかいたのかな』くらいにしか思わなかった。水浸しにした張本人のA子も着替えながら、なんだか申し訳ないようなおかしな気持ちがしたけど、夢の事だから忘れてしまっていた。ただ、トウはパジャマのままで、ふやけた手の平を不思議そうにじっと見た。

(つづく)

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