2014年3月14日金曜日

森の中30

(昨日のつづき)

「♪な〜なか〜い、かぜふいて〜、あたたかく〜なる〜、あ〜おいおとが〜、たたたたたたた〜、し〜ろいたいよう、さんかいお〜ちいて〜、あ〜かいめをした、とりがとんでいく〜、き〜のうみたゆ〜め〜、こゆびの〜さ〜きか〜ら〜、こぼれてく〜、も〜りのかげふんで・・・」

 皆で歌いながら、村の家々をまわる。それぞれの家の女の人がお菓子や料理を一つづつくれる。それを持ってきた木の重箱に並べていく。村の家を全部回ったら美味しそうな3段のお重が3セット出来上がった。
「よし、全部回ったな。一度お重を置きに家に戻ろう」
「すごいわね、計ったみたいにキレイに並んだわ」
「そうよ、いつも上手くできるものなのよ」

 家に戻るとマキさんが玄関扉に緑色の幕を掛けていた。
「ただいま、キレイな緑色ね」
「あら、おかえりなさい。こっちもちょうど終わったのよ」
「これ、お重」
「ハイ、皆、ご苦労様。一つはここに置いてってちょうだい。後の二つは中のテーブルに置いておいてね」
マキさんは門の下に台を置いて、お重を一つ置いた。
「それ、どうするの?」
「ああ、これは森とか空とかものの分なのよ。それよりも、S子さん、村中を歩いてお腹減ったでしょ。さあさ、中でお重を頂きましょうよ」
家の中に入るとテーブル椅子に座って、子供たちが待ち構えている。
「まあ、お待たせ」
「おかあ、はやくはやく」
皆で村を回って貰ってきたお重の中の料理はとても美味しかった。今朝、皆で作った料理はきれいさっぱり配られて、ひとかけも残っていなかった。S子は「ほんと、全部配っちゃったのね。あ、秘伝のタレの味見しておけば良かったわ」と思った。

「さて、お茶を飲んだら森に行こうか。カン、飾ったカゴを持っておいで」とコウが言った。「いよいよ行くんだ」とA子は思って、テーブルの脇に外しておいた手袋をぎゅっと掴んだ。

(つづく)

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