2014年2月8日土曜日

森の中18

(昨日のつづき)

 森が徐々に明るくなるのと、同じに森の家の中も明るくなる。ハンモックの部屋にも朝日が射して、三人の男とチヨがハンモックの中で眼を覚ました。
「あれ? おとう、トウがいない」
「ああ、ちょっと前に部屋出て行ったぞ。まあ、腹がなっとったから、食べ物でも探しに行ったんだろうよ」
コウは右手で眼の上の額をさすりながら、「おう来た来た」と部屋の入口の方を見た。廊下から手伝い女と一緒にトウが入ってきた。
「あ、みんなおきてるよ」
「トウ! 一人でどっかに行っちゃいけないっていってるでしょう。おとうも気付いたんなら一緒に行かなきゃ!」
「そんなこと言ってもなあ。俺も起きてたわけじゃないし、トウは起きてたしよ、それに家の中じゃないか」
チヨはキッとトウと父を交互に睨んだ。トウは小さい声で「じゃないか」と呟きながら手伝い女の足の陰に隠れた。
「ははは、チヨはしっかり者だなあ」
とサクとジュンが笑ったので、チヨは赤くなってうつむいた。チヨは昨日の出来事で誰か居なくなるんじゃないかと思っていた。皆はまるで平気にしているのに。
 手伝い女がチヨのハンモックの側に来て、耳元で何か囁いて優しくチヨの髪を撫でた。チヨはそれを聞いてパッと顔を上げると、すとんとハンモックから飛び降りると「先に行く」と部屋を走り出て行った。「トウもいく」とトウも一緒に走って行った。
「って、自分が勝手にドコ行くってんだよ」とコウがあきれながら笑い、「元気なこった」とサクとジュンも笑いながらハンモックを降りた。
「朝ご飯の用意が出来てますよ」
手伝い女は三人を朝日が白く広がる中庭に案内した。

(つづく)

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