2014年2月7日金曜日

森の中17

(昨日のつづき)

「ミルクを一杯くれないかい」と森の家の人が台所に入って来た。「はい」と手伝い女が小さい鍋でミルクを温め直している。
「おはようございます」
「おや、おはよう。トウはもう目が覚めたのかい」
「うん、カンニーはまだおきていないの?」
「ああ、もうじき起きるだろう。後で一緒に起こしに行こう」
「うん」

 森の家の人と手伝い女とトウは、カンとA子の服と靴を持って、池の側の二本の木の根元の二つの土の山のところに来た。そして、イチョウの木の一番低い枝にカンの服を、ネムの木の一番低い枝にA子の服をかけた。靴はそれぞれの根元に置いた。森の家の人は木の幹をコンコンとノックした。「さあ、もういい」と森の家の人も手伝い女もさっさと家に戻ろうとしたが、トウはそっとしゃがんで土の山を小さな手で触った。
「トウ、見ていたら出て来れないよ」と森の家の人に言われて、トウはすとととと振り向いて待っている二人に追いついた。「ちょっと、うごいてたよ」とトウは手伝い女に小さい声で言った。

 三人が去った後、土の山が中から崩れて、ドロだらけのカンとA子が出てきた。二人は池でドロを落として、服を着て、靴を履いた。
「あー、びっくりした」
「ほんと、びっくりしたわね」
二人は顔を見合わせて、ぷっと吹き出して、しばらく笑い続けた。

(つづく)

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