2014年2月14日金曜日

森の中20

(昨日のつづき)

「ああ、今晩も帰ってこない。やっぱり、あの占いはイカサマだったのかしら。ああ、私はどうしたらいいんだろう・・・」
A子の母は娘を森に行かせた事を後悔していた。すると、突然にビービーと玄関のブザーがなった。
「あっ、A子が帰って来たのかしら?」
母は急いで玄関に向かいドアを開けた。そこには手紙をくわえた大きな黒犬がいた。
「ひゃー、なんて大きな犬!!」
母はすくみ上がった。黒犬はその横をとことこすり抜けて玄関の中に入り、上がり框の所にゆっくりと手紙を置いて、小さい声でワンと鳴いた
「ああ、くわばわくわばら。しっしっ、あっちへお行き、あたしなんか食べても美味しくないわよ」
黒犬はちょっとの間不思議そうに母を見ていたが、空気を飲むように口をカプッと動かすとくるっと向きを変えて出て行った。母は急いでドアをぴしゃりと閉めて鍵をかけた。
「あー、怖かったわ。あんな大きな犬に噛まれたら死んじゃうわ。まったく、保健所は何やってるのかしら。で、あの黒犬は何を置いて行ったのかしら」
母はおそるおそる手紙を開いて読みはじめた。その手紙にはA子の文字で「母さんへ、森で男の人は見つからなかったよ。でも、村のお祭りに行くから一週間してから帰ります。心配しないでね。A子より」と書いてある。
「ああ、何よ、呑気に!お祭りに行くですって!あの子は私がこんなに心配してるのに!」
A子が無事でいるのだということを知ってふうと息をはいた。
「あら、何かしら?もう一枚紙が入っているわ」
封筒の中に一枚の招待券が入っていた。招待状には丁寧な文字で「満月の前の日の朝に白い犬をお迎えに行かせます。お母様が満月のお祭りに御出掛け下さることを心から願っております」と書いてある。
「な、私にも来いですって!?」
母はもちろん森に行ったことなどない。
「な、もう、あの子ったら!!分かったわよ、行けば良いんでしょうよ。行って、うんと叱ってやるんだから!!」
母親は開き直ると強い。そして、落ち着きを取り戻した母は「・・・満月のお祭りってことは、夜のお祭りなのよね。でも、森を歩く事に歩く事になるのかしら?犬の背中には流石に乗れないわよね。いったい何を着ていけばいいのかしら?」と考えはじめていた。

(つづく)

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