2014年2月3日月曜日

森の中14

(金曜日のつづき)
 
 コウとサクとジュンは森の家にA子とカンの入ったカゴを運んだ。森の家の人は三人にそのカゴを裏の池に沈めるように言い、三人はそろそろとカゴを沈めた。池の底に沈んだ三角のカゴからぽこぽこぽこぽこ赤い細かい泡がたくさん沸き上がった。
 チヨとトウはカンの服と靴を森の家に持って来た。森の家の人は服と靴を受け取るとそれを手伝い女に洗濯するように渡した。そして、二人を草色のハンモックが10個ほど吊ってあるほの暗い部屋に通した。その内の三つのハンモックが丸い膨らみを持って揺れていた。チヨは小さな声で森の人に尋ねた。
「カンは?」
「カンはもう少し時間がかかるから、寝て待つのが一番だよ」
森の人は優しく言うと、トウを小さい目のハンモックに抱き入れた。チヨはその横のハンモックによじ登った。二人はハンモックに包まると直ぐにすうと寝息を立てて眠り込んだ。

 裏の池では、カゴから沸いた泡が2つの塊になっていた。森の家の人と手伝い女は、その泡をそれぞれバケツの中に柄杓ですくい取った。森の家の人は池の側のイチョウの木の根元の土の山に、手伝い女はその隣のネムの木の根元の土の山に、バケツの中の泡をじょぼじょぼと注いだ。泡はしゅうと土に吸い込まれた。森の家の人は土の山にそっと耳を当てて頷き、手伝い女に少し休むように言った。手伝い女は空になったバケツを手に家の中に戻って行った。
 それから、森の家の人は2つの土の山の周りにいろいろな模様を丁寧に描いて、それにぽっと火をつけた。火のついた模様は模様のまま煙になって空中でふあふあと舞っていた。そのうちに森の方からさあと風がきて、煙の模様は大きくふわぁと広がって消えていった。


(つづく)

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