2014年1月18日土曜日

森の中3

(昨日のつづき)

 A子は浮きも沈みもせずにとーとーと流れていた。光の粒が通り抜けるのはこそばゆいけど、嫌じゃない。時々、岩に当たるのもしぶきが舞うけど痛いわけじゃない。でも、魚がヌルっと入ってくるのは、もうちょっと遠慮してくれないものかと思った。A子は透明な川の水になったけどA子という意識は割とハッキリしていた。ただただ、とーとーと流れ続けていると、うとうとと眠って夢を見ている様で、実態がつかめない。景色は色彩だなと思う感じに似ているかも。どれだけ時間がたったのか、空から幕が降りてきて、白から青、青から黄色、橙、ピンク、紫、紺、とうとう闇になる。A子も一緒に闇になり、そして、闇からだんだん黒になって、闇から切り取られてしまった。黒になったA子は、すすすうと川岸の葦の原の方に泳いでいった。

(つづく)

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