2014年6月21日土曜日

森の中51

(一昨日のつづき)

夢の中で歩いていたS子は、いつの間にか小舟に乗っていた。船先で白い犬と黒い犬がじっと前をみている。その船には、帆もエンジンも無いのに、赤い光に呼ばれるようにゆらゆらと前に進んでいる。
S子はロッキングチェアに座ったまま、森の家の人と二人の男の人に広場へ続く道を神輿のように運ばれている。お祭りに集まった人たちも、スッスッと船先が波を切るように道を開けていく。
夢の中の船が進むにつれ、水の中では小さい赤い光が点滅し、細い魚がポウポウと鳴いている。
S子たちが広場に着くと、人々は少しのあいだ目を閉じて、楽隊のオーボエが静かに奏でる音楽を聞いていた。
夢の中でS子は白い服を着て、白い灯台の階段を上っていた。灯台の赤い光が、何かを呼ぶように、ゆっくりと回っている。
広場の真ん中の竹で作った大きな三角の塔の前で、男の一人がロッキングチェアからS子を降ろし白い布で包んで、もう一人の男の背中に担がせた。S子を担いだ男はスルスルと竹の塔を上って行く。塔の一番上のザクロ石を集めた三角の飾りが夕日を反射して赤々と輝いた。

(つづく)

0 件のコメント:

コメントを投稿