2014年4月10日木曜日

森の中40

(昨日のつづき)

「あ、まだ、明かりがついてるね」
「ホントだ、皆、まだ起きてるみたいだ」
家の中から笑い声と歌が聞こえて来る。
「なんだか、とっても賑やかみたい。まだ、チヨちゃん起きてるのかな」
「たぶん、トウ以外はきっと起きてるよ」
と言いながら、玄関のドアを「ただいま」と開けたら、家の中が真っ暗だ。
「え? ね、ねえ、今、さっき、明かりついてたよね、声、聞こえたよね・・・」
「う、うん。何か様子が変だ。とりあえず、台所に行ってみよう・・・」
二人は何だか小声でそろそろと話した。台所に行っても誰もいない。
「マキおばさんも居ないね・・・」
「・・・どうしたんだろ。あ、庭の方が明るい、きっと、皆、庭に居るんだよ」
二人は、勝手口から庭に出た。扉の外はカンの家の庭じゃなくて、森の家の人の庭だった。庭の真ん中で三角の炭がパチパチと爆ぜている。側に白い犬と黒い犬が座っている。
「・・・犬がいる。・・・ねえ、もしかしたら、僕たち、帰れてないのかもしれない」
「えっ?」
風がさあっと吹いて、森の木々がざざざざおうおうと鳴った。二匹の犬はそれに答えるように『わおーん』と吠えた。

(つづく)


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