2014年1月22日水曜日

森の中6

(昨日のつづき)

 カンとトウが川の土手に着くと、河原には先に出かけた姉のチヨとその友達がザルを持ってキャーキャー水しぶきを立てながら、川砂利をさらっていた。チヨたちのグループは来春に上の学校に行くので、大人にはなっていないけど、子供というには大きいという感じだ。
「近頃のチヨネーは、大人の女みたいにスカートを履いたり、髪を結わえたりして、なんか変だ。トウが真似したがって困る」とカンは思っていた。それに、妙にくすぐったい声を出したりするんだ。ちょっと前のチヨは、ずっと細くて茶色くて、男の子なんかよりずっと走るのが早くって、それに目が抜群に良くって、どんな遠くの物だって、どんな小さいものだって、誰よりも早く見つけてはそれをカンに教えてくれた。そんな姉のが大人の女の人みたいになってだんだんと白くなっていくのが、カンにはどうにも納得がいかなかった。
 チヨが河原の方から土手を歩くカンとトウを見つけて大きな声で叫んだ。
「カーン、トー、こっちこーい」
相変わらず目は良いらしいとカンは思ったが、その声が聞こえないフリをして歩き続けようとした。でも、トウが立ち止まって困った様子で、側のカンと河原にいるチヨの方をキョトキョト見た。
「チヨネーが呼んどるよ、カンニー」
「トウは、チヨネーのトコ行きたいか? 行きたきゃ、行ってええぞ。・・・ええが、実は、俺は、昨日の晩に夢で、この先の葦の原のトコにザクロ石がいっぱい溜まってるのを見たんだ。でもな、これはチヨネーたちには秘密だぞ」
と、カンはトウの手を放そうとした。トウは放されまいとしてカンの手を両手つかんだ。トウはその拍子にクルッと回る格好になったが、嬉しそうに笑った。小さなトウはひみつという言葉が気に入ったらしい。


(つづく)

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