2014年7月31日木曜日

黒部立山

なんやかんやで、近頃、旅行に行く時に、前触れもなく、サッパリ計画する隙もなく、唐突に行く羽目になっています・・・。
 今回は、昔からぼんやり憧れていた「黒部ダム」&「黒部渓谷トロッコ電車」に2泊3日で唐突に行ってきました。
 そして、黒部ダムに向うアルペンルートの途中の室堂駅標高約2,450 mで見る立山連峰は、乗り物を乗り継いで来れる場所の想定を遥かに越えていました。あまりにすごすぎて、ドコにいるのか分からなくなり、ビックリし過ぎて、頭がグルグルして、身体がフワフワし、オロオロしました。
 黒部ダムも面白かったし、トロッコ電車も楽しかったし、渓谷もスゴかったし、ニホンカモシカとニホンザル見れたし(雷鳥とオコジョは見れなかった・・・)、お米も美味しいし、温泉は効き過ぎてフラフラになりましたが、黒部立山はとてもとても素晴らかったです。
また、ゆっくり行ってみたいです。

2014年6月21日土曜日

森の中51

(一昨日のつづき)

夢の中で歩いていたS子は、いつの間にか小舟に乗っていた。船先で白い犬と黒い犬がじっと前をみている。その船には、帆もエンジンも無いのに、赤い光に呼ばれるようにゆらゆらと前に進んでいる。
S子はロッキングチェアに座ったまま、森の家の人と二人の男の人に広場へ続く道を神輿のように運ばれている。お祭りに集まった人たちも、スッスッと船先が波を切るように道を開けていく。
夢の中の船が進むにつれ、水の中では小さい赤い光が点滅し、細い魚がポウポウと鳴いている。
S子たちが広場に着くと、人々は少しのあいだ目を閉じて、楽隊のオーボエが静かに奏でる音楽を聞いていた。
夢の中でS子は白い服を着て、白い灯台の階段を上っていた。灯台の赤い光が、何かを呼ぶように、ゆっくりと回っている。
広場の真ん中の竹で作った大きな三角の塔の前で、男の一人がロッキングチェアからS子を降ろし白い布で包んで、もう一人の男の背中に担がせた。S子を担いだ男はスルスルと竹の塔を上って行く。塔の一番上のザクロ石を集めた三角の飾りが夕日を反射して赤々と輝いた。

(つづく)

2014年6月19日木曜日

森の中50

(5月20日のつづき)

S子は裏庭の温室に連れて行かれた。おじいさんは、S子を温室の隅に置いてある藤で編んだロッキングチェアーに座らせ「眠るといいよ」と言った。それから、おじいさんは温室から赤い花を全部運び出し、黄色の花と青い花をS子の回りに並べた。おばあさんは、緑のタオルケットを持ってきてS子に掛けた。マキはS子が良い夢を見るように願いながら、温室の扉をパタンと閉めた。
 S子は身体の重みで、夢にぐんぐん沈んでいった。とても深い内側の闇へ。底まで降りて、S子は夢の中の深い闇に独りで立っていた。赤い目はどんな闇の中にいてもよく見えた。赤外線カメラよりずっと。でも、昼間のように見える訳じゃない。闇の中には闇の中の世界があるからだ。とても静かだ。辺りはずうと平に広がっていて地面には冷たい水が踝くらいの高さで流れていた。時折、細長い魚が足元をすり抜けるのが見える。遠くに赤く点滅している光が見える。S子はその光の方に向って歩き出した。
 外の世界では、太陽が森の向うに傾いて、夕刻に近づいていた。広場の方では煙だけの打ち上げ花火がボンボンと祭りの始まりを告げるために上がっている。温室のドアがカチャと小さい音を立てて開いた。森の家の人と何人かの2人の男の人がS子の座っているロッキングチェアーをゆっくりと持ち上げて、外に運び出した。庭にはその様子を見ながら、マキが心配そうに胸の前で固く手を握り合わせていた。森の家の人が「大丈夫だよ」と頷くとS子をそのまま広場の方に運んでいった。
 S子は夢の闇の中で歩いきつづけている。S子の前をいつの間にかいつものように白い犬と黒い犬が導くように歩いている。

(つづく)
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 今年から、実家の岡田染工場で染めてる法被の縫製の仕事をすることになり、いろいろと準備やら練習やらでバタバタとしてました。なかなか文章を書く余裕がありませんでした。この先も夏の間は縫製の仕事がきっと忙しいので、前程、頻繁に更新できないと思いますが、ボチボチと書き繋いで行くつもりです。
 

2014年5月20日火曜日

森の中49

(昨日のつづき)

暖かい風が吹いて、庭の木にとまっている鳥の声や、カチャカチャとお皿やカップを片付ける音が聞こえる。目の奥の少しの痛みは、じんわりと熱を帯びて、S子の瞼は自然に閉じてしまった。目を閉じたS子の耳にマキの声が聞こえてくる。
「あら、S子さん、寝ちゃったの?」
「眠ってないんだけど、泣き過ぎたせいか、目の奥が熱くて、目を開けてられないのよ」
「ちょっと、ゴメンなさいね」
とマキの手がS子の瞼をグッと開いた。開いた瞼の中には赤い目があった。S子は世界が真っ赤になっている事に驚き、思わずその手を振りほどいた。再び、瞼は閉じた。S子の目は内からも外からも赤くなっていた。
濃い赤のザクロ石。

(つづく)

2014年5月19日月曜日

森の中48

(5月15日のつづき)

メイン通りから細い路地を右へ左へと抜けて、緑の畑の中の小道を、老夫婦の後を歩きながら、S子の涙は流れつづけた。蔦で覆われた家の前に着いたときには、タオルはぐっしょり濡れていた。後から走って来たマキが三人に追いついた。ふうふうと息を切らしてた。おじいちゃんは裏庭の方に行った。おばあちゃんとマキとS子は玄関から家の中に入った。家の中に入ったら、おばあちゃんは台所へ、マキとS子は縁側に行って腰をおろした。マキは屋台で買って来た食べ物の包みを膝の上でほどいた。三角に切った野菜や肉を串に刺して焼いた料理と笹の葉で包んだ三角のおこわ飯が出てきた。おばあちゃんがミルクの入ったお茶をもってきて、マキの横に置いて、自分もその隣に座った。マキはS子にお茶を渡した。S子は泣きながら、お茶を受け取るとコクコクと飲んだ。何かのスパイスの味がした。S子の涙がピタッと止まった。
「あ、止まったわ」
「ああ、良かった。さ、これ、食べましょう」
そこに、おじいちゃんが何種類か果物を持って庭の方からきて、おばあちゃんの横に座った。四人は縁側に横並びに腰をおろし、庭を見ながら、いろいろ食べた。庭にはいろんな草花が好き勝手に生えていたが、調和が取れていて、爽やかで、美しかった。
S子は目の奥に少し痛みを感じていた。

(つづく)

2014年5月18日日曜日

かたちの発語

昨日、BankARTで かたちの発語 展 ー田中信太郎×岡﨑乾二郎×中原浩大 ー を見てきました。かたちの発語 というタイトルのとおり、それぞれの作品の形がハッキリとした意志を持って、とても大事な事を発していて、それが何なのかは、私にはうまく言葉にはできない ですが、こういうものが在るっていうことが、とても良かった、と思いました。
夜に林 道郎氏の司会で、田中信太郎×岡﨑乾二郎×中原浩大のトークショーがあって、お客さんいっぱい、100席、満席。内容は、 今回、展示をしている三人は、何かのカテゴリーで括れない仕事をしているという話から、80年代の日本の美術の移り変わり状況とか、岡﨑乾二郎さん家で飼っていた犬の名前がドナルド・ジャットだという楽しい話とかとかでした。
この展覧会は6月22日までやってます。おススメです。

2014年5月15日木曜日

森の中47

(昨日のつづき)

泣きじゃくるS子を、近くにいた広場の人たちが「なんだ、どうした」と気にしはじめた。
「まあ、とりあえず、家に来るかい? うちの家でならいくら泣いてもかまわないし」
と、おばあさんは小声でマキに言った。
「そうね、私の家だと子供たちが居るかも知れないし」
マキも小声で答えた。
「じゃあ、これ被りなさい」
とおばあさんはS子の頭にスカーフを被せてやった。マキも腰にぶら下げていたタオルをS子に渡した。
「私も直ぐに行くから、母さん、父さん、お願いね」
「ああ、大丈夫、ゆっくり先に行っとるよ。さあ、S子さん立てるかね」
おじいさんとおばあさんは、S子の両脇を抱えるようにして立たせた。そして、おばあさんがS子の耳元で何か言うと、S子はこくんと頷いて、おじいさんとおばあさんの後をシャックリをしながらついて行った。マキはそれを見送ると風呂敷を広げて細々したものを詰めはじめた。その様子を見ていたのか、広場の向いにいたサクとジュンが「よう、マキさん、手伝おう」と小走りにやってきた。
「ああ、ありがとう。ここは、もう何もやる事ないわ。夜はコウが魚を焼いて売るみたいよ」
「ああ、それは俺たちも手伝うんだ。な、なあ、あの女の人どうしたんだい?」
サクとジュンだけじゃなく、近くの人も少し心配そうにマキの方を見ている。マキは、何でもないわという風に、腰に手をやって首を回しながら言った。
「ああ、S子さん? 彼女ったら、シャックリが止まらなくてむせちゃったのよ。おじいちゃん家のお茶でそういうのに効くのがあるから、連れてってもらったのよ」
「なんだ、それだけかぁ」
「そう、それだけよ」
そう言うと、マキはふろしき包みとさっき屋台で買った食べ物の包みを持ち、ヒラヒラと二人に片手を振って「また、後でねぇ」と広場から出て行った。
後に残されたとサクとジュンはマキの背中を見送ると「うーん、まあいいか」と顔を合わせた。
そこに呑気なコウが「よう、ウナギとナマズが大漁だぞ」と両手に魚籠をぶら下げて帰って来た。

(つづく)