2014年1月20日月曜日

森の中4

(一昨日のつづき)


 ちちちっちちちちっちちちちちちちちちっと音がする。葦の草むらに数匹のカネタタキがいるらしい。黒になったA子は、しばらく葦の根元でジッと様子をうかがっていた。透明の川の水になってずいぶん流れていたから森の中を抜けてしまったようだ。
 A子は夜空を見上げて森に戻る方法を考えようとした。でも、それよりも何よりもお腹が空いて仕方がなかった。なので、とりあえず、目の前の葦の茎を噛んでみた。噛み取ると青く苦い。齧られた葦はふぁさっと水面に倒れこんだ。その葦についていたカネタタキが水の上に落ちてクリクリ回っている。A子はカネタタキも食べてみた。口の中でプチッと潰れて、茶色い味がした。A子はそこらにある物を手当たり次第に食べていった。水草、水苔、流木、タガメ、タニシ、メダカ、ザリガニ、カエル、さらに、石、空き缶、靴、ビニールなどなど、本当に手当たり次第。それぞれが赤やら緑やら紫やらビニールやらの味がした。A子はいろいろ食べたけど、黒なので黒いままだった。何を食べてみても、黒いまま、お腹は空いたままだった。A子はとても悲しくなった。目から涙が溢れて止まらなかった。夜空では満天の星が「赤いサソリの歌」を歌っていた。

(つづく)

2014年1月18日土曜日

森の中3

(昨日のつづき)

 A子は浮きも沈みもせずにとーとーと流れていた。光の粒が通り抜けるのはこそばゆいけど、嫌じゃない。時々、岩に当たるのもしぶきが舞うけど痛いわけじゃない。でも、魚がヌルっと入ってくるのは、もうちょっと遠慮してくれないものかと思った。A子は透明な川の水になったけどA子という意識は割とハッキリしていた。ただただ、とーとーと流れ続けていると、うとうとと眠って夢を見ている様で、実態がつかめない。景色は色彩だなと思う感じに似ているかも。どれだけ時間がたったのか、空から幕が降りてきて、白から青、青から黄色、橙、ピンク、紫、紺、とうとう闇になる。A子も一緒に闇になり、そして、闇からだんだん黒になって、闇から切り取られてしまった。黒になったA子は、すすすうと川岸の葦の原の方に泳いでいった。

(つづく)

2014年1月17日金曜日

森の中2

(昨日のつづき)

 A子は川の音に引き寄せられるように、森の中をとーとーと歩いていく。とーとーとーとーとーとー、パキッ、と小枝が足元で折れる音がした。気がついたようにA子は目を細めた。いつの間にか森の淵にきていた。森の淵は緩やかな下り坂になっていた。その先には透明な川が流れている。その川を見たとたん喉がゴクリと動いた。A子はそれまで感じたことの無い渇きを覚えた。吸い込まれるように川に下り、そのまま川の中にザブザブと入った。川の真ん中辺りで胸の位置まで水がきた。A子は顔をザバリとつけてゴクゴクと水を飲み始めた。ごくごくごくごくごくごくごくごく、身体の水分は川の水になっていった。そのうち、A子は透明な川の水となって流れていった。

(つづく)

2014年1月16日木曜日

森の中


 森の中は他とは時間の流れ方が違うのか周りの世界からは見えない。森の木々は、幹を太くし、枝を伸ばし、葉を生い茂らせている。根もトコロ狭しと張り巡り地面を持ち上げて凸凹に波打たせている。凸凹の地面はいろんな種類の苔で覆われ、黄緑色に発光しているようだ。中空は均等な薄い光と瑞々しい冷えた空気で満ちている。辺りはしーんと静まりかえっていて、ときどき聞こえる甲高い鳥の鳴き声や随分離れている筈の国道を通るトラックの排気音は、別世界からの呼び声のようだ。
 こんな場所で生きているかどうかも分からない男を探す。なんて馬鹿げているんだ。そうは思っても、探さない訳にはいかない。絶対に、見つけれる訳などないのに。なぜ、ここに探しに行くように言われたのかもよく分からない。あんな占い師の言葉にになんの根拠があると言うのだ。占い師の言葉を信じた母に森に行くように説得され、今、森に居る自分を思うとA子はスッと冷めた気持ちがした。ため息をつきながら、結局、男を探しているのかどうかよく分からないまま、足元の根につまずかないように森の中をゆっくりと歩いている。何処かから途切れ途切れにザァザァというノイズのような音が聞こえる。そのまましばらく進むとザァザァという音は切れ目がなく続くようになった。どうやら近くに川が流れているらしい。

(つづく)

2014年1月15日水曜日

サイカチ


 北からのヒンヤリした風が吹く林沿いの道に、曲がりくねった豆のサヤが落ちていた。
「これはサイカチのサヤじゃないかしら?」
と、S子はそのサヤを拾い上げ、辺りの木々を見上げる。(サイカチ(カワラフジノキ)豆科の落葉高木。幹や枝にはするどい刺の塊がいっぱい付いている)
でも、そんなトゲトゲの木は近くには1本も見当たらず、葉や豆も落ちてしまっているのでどうにも分からない。S子はサヤをコートのポケットにしまい、なんとなく腑に落ちないまま歩き始める。しばらく歩くと、こじんまりとした古い稲荷神社があった。S子はポケットのサヤをつかんで、神社の方へ細い石段を上る。鳥居をくぐると左に小さい屋根のある手水場があった。切った竹の先から澄んだ水がちょろろとねじれながら出ていて、石鉢に溜まった水を揺らしている。
「では、失礼して」
左手で柄杓を取ると水を汲み、右手に持った豆のサヤに水をかける。水は思っていたよりもずっと温かくて、冷えた指先に血が戻ったようだった。
「泡立つかしら」
とサヤを揉んでみると、サヤは手の中でクスクスと笑い声のような音をたてながら泡立った。音につられてモミュモミュと揉み続けていたらキメ細かい泡の卵のようになった。(サイカチのサヤにはサポニンが含まれているので、水をかけて揉むと泡立つ)
「やっぱり、サイカチだった」
すっと柄杓で水を汲み、泡の卵に流しかけた。水を浴びるとヒラリと衣をぬぐように泡がめくれた。S子の手には濡れた赤茶色のサヤが残った。あっ、そのサヤはぶるっと身震いをひとつしパキッと音をたてて2つに開いた。そして、その中には三角の耳と白くてフワフワした尻尾のある顔の尖った小さいものが丸まって7つ入っていた。
「・・・キツネ?」
そう、割れたサヤの中の丸い凹みには、豆じゃなくて、小さい白い狐が並んで7匹収まっていた。
小さい白い狐たちはひょいと首を上げて、ちょっとキョロキョロと辺りを見回し、最後にチラッとS子を見ると、ポポポポと豆が弾けるように跳ね飛んで、神社の参道をぴょんぴょんぴょん、賽銭箱もぴょんと飛び越えて社の扉の隙間から中に入っていった。
「なんだ、サイカチじゃなかったのかぁ」
S子は少しガッカリしたが、手に残ったサヤを社のふちに置き、賽銭箱に5円投げ入れ、鈴を鳴らし手を合わせた。お願いごとはしないでおいた。

2014年1月14日火曜日

2014

新年明けましておめでとうございます。

今年は、出来ると良いなと思い続けているタッチタイピングの練習をしようと思っています。
なので、ここで「なんだか奇妙な夢ような話」を書いていこうと思う。
でも、練習がてらなので、始めの方は短めになるだろう。

2013年11月24日日曜日

FACE展 2014 損保ジャパン美術賞展

FACE展 2014 損保ジャパン美術賞展で審査員特別賞を頂きました。
来年の2月22日から3月30日の間、損保ジャパン東郷青児美術館で展覧会があります。

開催日 2014年2月22日(土)~3月30日(日)(月曜日休館)
午前10時-午後6時(入館は午後5時30分まで)
場所 損保ジャパン東郷青児美術館
〒160-8338新宿区西新宿1-26-1損保ジャパン本社ビル42

一般:500円
大・高校生:300円   ※学生証をご提示ください
中学生以下:無料   ※生徒手帳をご提示ください
障害者無料
※障害者手帳(身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者手帳)のご提示によりご本人とその介護者(1名まで)は無料。ただし、被爆者健康手帳をお持ちの方は、ご本人のみ無料。
※20名以上の団体は各100円引き

http://www.sompo-japan.co.jp/museum/exevit/index_face2014.html


《海岸》2013年
アクリル・キャンヴァス
162.1×130.3cm
お時間ございましたら見に行ってやってください。
F100号の割と大きい絵です。
よろしくお願いいたします。