2015年2月12日木曜日

2015「群生する耳-微小」


今週の日曜日 2月15日13:00から「群生する耳-微小」ワークショップが始まります。ご興味のある方はまだ間に合いますので、是非ご参加下さい。
特設ページも4ページ目まで更新しました。
(池宮中夫さんのテキスト&そのテキストを私が置換・変換したテキストが載ってます)
宜しくお願いします。

https://sites.google.com/site/herdenohrminute/

○ワークショップの詳しい日程等はこちら
http://blanclass.com/japanese/schedule/20150215/

2015年1月10日土曜日

池宮中夫[HerdenohrーMINUTE 群生する耳ー微小] ダンスワークショップ&公演   blanClass 


明けましておめでとうございます。
本年もどうぞお引き立てのほど宜しくお願い申し上げます。
さて、早速ですが、

池宮中夫[HerdenohrーMINUTE 群生する耳ー微小]
ダンスワークショップ&公演   blanClass 
オブザーバーは、ダンサーでもあり、「ノマド~sの演出・振付」をされている池宮中夫さんなのですが、そこに恐れ多くもコラボレーターとして参加することになりました。(私は主にテキストワークを中心に いろいろとワークショップのお手伝いをします)
 今回のワークショップ自体はダンス制作を主としています。
ですが、想像したものを導きだす方法や、そのイメージが発せられた空間に生じる変化や、それを見ている観客を日常と非日常の狭間に連れて行くための手順という、そういう 言葉ではなかなか分かりにくいことを学ぶ希有なチャンスになると思います。
 ですので、ダンスや表現や制作に関わったことのない方でも、池宮さんのテキストより抜粋すると「時を少しだけこの場所に預けると、アタマと身体に風が入る。そんなミヌート(微小)だ」「自由に自由に放つ窓に自分が出現する」という ことを経験出来るはずです。もちろん、ダンスや制作に関わってる人たちも大大歓迎!
ワークショップの日程や参加費、申込方法など、詳しいことはblanClassのHPをご覧下さい。皆様のご参加お待ちしております!!

2014年12月18日木曜日

森の中53

(一昨日のつづき)

湖面はプクンプクンと上がる泡から出来る波紋が幾つもの円を描いている。その円形の波でゆらゆらと揺れ動くカヤックに子供たちは身体を預けて泡を吸い込んでいる。右手で葦のストローを持ち、左手を空にかかげている。その左手の指の先からプクンと泡が上がる。そして、その泡はゆらゆらと満月に吸い込まれていく。A子は目の前に上がった泡を葦のストローですぅすぅと吸い込んだ。吸い込んだ泡は身体の中でプッと一瞬膨らんで、左手の指先からプクンと出て行く。その感触がくすぐったくて何だかとても面白いと思った。A子はもっと泡が上がってないかなと目を細めて湖面を見つめた。湖の湖面には波紋がぶつかりあって出来た渦がそこここでクルクルと回っている。A子のいるちょうど真ん中辺りの渦はかなり大きい。
「A子ちゃん、もう戻って!早く早く!」と岸の方からチヨの呼ぶ声が聞こえる。ハッとしてA子は顔を上げた。既に他の子供たちのカヤックは岸辺の近くにいる。A子は慌てて上半身を岸の方にひねった。途端、カヤックはひっくり返り、木の葉のように大きな渦に巻き込まれて行った。

(つづく)

2014年12月15日月曜日

森の中52

すっかり間が空いてしまいましたが、6月21日のつづきです。まあ、そのうち、いつになるか分かりませんが、森の中のお話が一段落して、通して添削できたらHPにでも載せるので、良ければ、取り合えず、つづき、読んでください。
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S子を担いで塔に上った男は、ザクロ石の飾りの裏側の三角形に組んだ竹の骨組みに手際よくS子のロッキングチェアーを白い布で固定した。そして、クルクルと滑るように塔から降りた。夕日がザクロ石の飾りの裏を通って、ロッキングチェアーで眠るS子の顔を真っ赤に染めている。赤いS子の瞼が開く。右目は青い石に、左目は黄色の石に。その目に反射した光は青と黄色、赤い三角の飾りに使われているザクロ石を真ん中辺りから透明に変えていく。夕日が森の先に沈んでいくスピードと同じ早さで、赤いザクロ石の三角の飾りは透明のガラスになった。
塔の下に集まっている人たちは、男が塔から降りてくると、まるで何も起らなかったように、そのまま夜なっても、にぎやかにお祭りのつづきを楽しんでいた。
 そうそう、そう言えば、日が落ちる前に森の集まった子供たちは、日の落ち始める頃に湖の真ん中に、木の船カヤックで滑り出し、湖底からプクンプクンと上がる泡を葦のストローですぅすぅと飲むように吸い込んでいる。

(つづく)

2014年11月10日月曜日

夜の水面の練習


6号の小さいキャンバスにアクリル絵具で描いたのですが、ちゃんと撮影のセッティングする根性がなくて、写真がちょっと光っちゃった・・・。また、そのうち、ちゃんと撮ろう・・・。

2014年10月19日日曜日

ぼちぼち

気がつけば、朝晩が涼しいと言うか、もう寒い。
夏前に下地を塗った100号のキャンバスを背にしつつ、 取りあえず手慣らしってことで小さい紙に色鉛筆でボチボチ落書きました。そのうち、文章の続きにも手を付けるはず・・・。




2014年7月31日木曜日

黒部立山

なんやかんやで、近頃、旅行に行く時に、前触れもなく、サッパリ計画する隙もなく、唐突に行く羽目になっています・・・。
 今回は、昔からぼんやり憧れていた「黒部ダム」&「黒部渓谷トロッコ電車」に2泊3日で唐突に行ってきました。
 そして、黒部ダムに向うアルペンルートの途中の室堂駅標高約2,450 mで見る立山連峰は、乗り物を乗り継いで来れる場所の想定を遥かに越えていました。あまりにすごすぎて、ドコにいるのか分からなくなり、ビックリし過ぎて、頭がグルグルして、身体がフワフワし、オロオロしました。
 黒部ダムも面白かったし、トロッコ電車も楽しかったし、渓谷もスゴかったし、ニホンカモシカとニホンザル見れたし(雷鳥とオコジョは見れなかった・・・)、お米も美味しいし、温泉は効き過ぎてフラフラになりましたが、黒部立山はとてもとても素晴らかったです。
また、ゆっくり行ってみたいです。

2014年6月21日土曜日

森の中51

(一昨日のつづき)

夢の中で歩いていたS子は、いつの間にか小舟に乗っていた。船先で白い犬と黒い犬がじっと前をみている。その船には、帆もエンジンも無いのに、赤い光に呼ばれるようにゆらゆらと前に進んでいる。
S子はロッキングチェアに座ったまま、森の家の人と二人の男の人に広場へ続く道を神輿のように運ばれている。お祭りに集まった人たちも、スッスッと船先が波を切るように道を開けていく。
夢の中の船が進むにつれ、水の中では小さい赤い光が点滅し、細い魚がポウポウと鳴いている。
S子たちが広場に着くと、人々は少しのあいだ目を閉じて、楽隊のオーボエが静かに奏でる音楽を聞いていた。
夢の中でS子は白い服を着て、白い灯台の階段を上っていた。灯台の赤い光が、何かを呼ぶように、ゆっくりと回っている。
広場の真ん中の竹で作った大きな三角の塔の前で、男の一人がロッキングチェアからS子を降ろし白い布で包んで、もう一人の男の背中に担がせた。S子を担いだ男はスルスルと竹の塔を上って行く。塔の一番上のザクロ石を集めた三角の飾りが夕日を反射して赤々と輝いた。

(つづく)

2014年6月19日木曜日

森の中50

(5月20日のつづき)

S子は裏庭の温室に連れて行かれた。おじいさんは、S子を温室の隅に置いてある藤で編んだロッキングチェアーに座らせ「眠るといいよ」と言った。それから、おじいさんは温室から赤い花を全部運び出し、黄色の花と青い花をS子の回りに並べた。おばあさんは、緑のタオルケットを持ってきてS子に掛けた。マキはS子が良い夢を見るように願いながら、温室の扉をパタンと閉めた。
 S子は身体の重みで、夢にぐんぐん沈んでいった。とても深い内側の闇へ。底まで降りて、S子は夢の中の深い闇に独りで立っていた。赤い目はどんな闇の中にいてもよく見えた。赤外線カメラよりずっと。でも、昼間のように見える訳じゃない。闇の中には闇の中の世界があるからだ。とても静かだ。辺りはずうと平に広がっていて地面には冷たい水が踝くらいの高さで流れていた。時折、細長い魚が足元をすり抜けるのが見える。遠くに赤く点滅している光が見える。S子はその光の方に向って歩き出した。
 外の世界では、太陽が森の向うに傾いて、夕刻に近づいていた。広場の方では煙だけの打ち上げ花火がボンボンと祭りの始まりを告げるために上がっている。温室のドアがカチャと小さい音を立てて開いた。森の家の人と何人かの2人の男の人がS子の座っているロッキングチェアーをゆっくりと持ち上げて、外に運び出した。庭にはその様子を見ながら、マキが心配そうに胸の前で固く手を握り合わせていた。森の家の人が「大丈夫だよ」と頷くとS子をそのまま広場の方に運んでいった。
 S子は夢の闇の中で歩いきつづけている。S子の前をいつの間にかいつものように白い犬と黒い犬が導くように歩いている。

(つづく)
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 今年から、実家の岡田染工場で染めてる法被の縫製の仕事をすることになり、いろいろと準備やら練習やらでバタバタとしてました。なかなか文章を書く余裕がありませんでした。この先も夏の間は縫製の仕事がきっと忙しいので、前程、頻繁に更新できないと思いますが、ボチボチと書き繋いで行くつもりです。
 

2014年5月20日火曜日

森の中49

(昨日のつづき)

暖かい風が吹いて、庭の木にとまっている鳥の声や、カチャカチャとお皿やカップを片付ける音が聞こえる。目の奥の少しの痛みは、じんわりと熱を帯びて、S子の瞼は自然に閉じてしまった。目を閉じたS子の耳にマキの声が聞こえてくる。
「あら、S子さん、寝ちゃったの?」
「眠ってないんだけど、泣き過ぎたせいか、目の奥が熱くて、目を開けてられないのよ」
「ちょっと、ゴメンなさいね」
とマキの手がS子の瞼をグッと開いた。開いた瞼の中には赤い目があった。S子は世界が真っ赤になっている事に驚き、思わずその手を振りほどいた。再び、瞼は閉じた。S子の目は内からも外からも赤くなっていた。
濃い赤のザクロ石。

(つづく)

2014年5月19日月曜日

森の中48

(5月15日のつづき)

メイン通りから細い路地を右へ左へと抜けて、緑の畑の中の小道を、老夫婦の後を歩きながら、S子の涙は流れつづけた。蔦で覆われた家の前に着いたときには、タオルはぐっしょり濡れていた。後から走って来たマキが三人に追いついた。ふうふうと息を切らしてた。おじいちゃんは裏庭の方に行った。おばあちゃんとマキとS子は玄関から家の中に入った。家の中に入ったら、おばあちゃんは台所へ、マキとS子は縁側に行って腰をおろした。マキは屋台で買って来た食べ物の包みを膝の上でほどいた。三角に切った野菜や肉を串に刺して焼いた料理と笹の葉で包んだ三角のおこわ飯が出てきた。おばあちゃんがミルクの入ったお茶をもってきて、マキの横に置いて、自分もその隣に座った。マキはS子にお茶を渡した。S子は泣きながら、お茶を受け取るとコクコクと飲んだ。何かのスパイスの味がした。S子の涙がピタッと止まった。
「あ、止まったわ」
「ああ、良かった。さ、これ、食べましょう」
そこに、おじいちゃんが何種類か果物を持って庭の方からきて、おばあちゃんの横に座った。四人は縁側に横並びに腰をおろし、庭を見ながら、いろいろ食べた。庭にはいろんな草花が好き勝手に生えていたが、調和が取れていて、爽やかで、美しかった。
S子は目の奥に少し痛みを感じていた。

(つづく)

2014年5月18日日曜日

かたちの発語

昨日、BankARTで かたちの発語 展 ー田中信太郎×岡﨑乾二郎×中原浩大 ー を見てきました。かたちの発語 というタイトルのとおり、それぞれの作品の形がハッキリとした意志を持って、とても大事な事を発していて、それが何なのかは、私にはうまく言葉にはできない ですが、こういうものが在るっていうことが、とても良かった、と思いました。
夜に林 道郎氏の司会で、田中信太郎×岡﨑乾二郎×中原浩大のトークショーがあって、お客さんいっぱい、100席、満席。内容は、 今回、展示をしている三人は、何かのカテゴリーで括れない仕事をしているという話から、80年代の日本の美術の移り変わり状況とか、岡﨑乾二郎さん家で飼っていた犬の名前がドナルド・ジャットだという楽しい話とかとかでした。
この展覧会は6月22日までやってます。おススメです。

2014年5月15日木曜日

森の中47

(昨日のつづき)

泣きじゃくるS子を、近くにいた広場の人たちが「なんだ、どうした」と気にしはじめた。
「まあ、とりあえず、家に来るかい? うちの家でならいくら泣いてもかまわないし」
と、おばあさんは小声でマキに言った。
「そうね、私の家だと子供たちが居るかも知れないし」
マキも小声で答えた。
「じゃあ、これ被りなさい」
とおばあさんはS子の頭にスカーフを被せてやった。マキも腰にぶら下げていたタオルをS子に渡した。
「私も直ぐに行くから、母さん、父さん、お願いね」
「ああ、大丈夫、ゆっくり先に行っとるよ。さあ、S子さん立てるかね」
おじいさんとおばあさんは、S子の両脇を抱えるようにして立たせた。そして、おばあさんがS子の耳元で何か言うと、S子はこくんと頷いて、おじいさんとおばあさんの後をシャックリをしながらついて行った。マキはそれを見送ると風呂敷を広げて細々したものを詰めはじめた。その様子を見ていたのか、広場の向いにいたサクとジュンが「よう、マキさん、手伝おう」と小走りにやってきた。
「ああ、ありがとう。ここは、もう何もやる事ないわ。夜はコウが魚を焼いて売るみたいよ」
「ああ、それは俺たちも手伝うんだ。な、なあ、あの女の人どうしたんだい?」
サクとジュンだけじゃなく、近くの人も少し心配そうにマキの方を見ている。マキは、何でもないわという風に、腰に手をやって首を回しながら言った。
「ああ、S子さん? 彼女ったら、シャックリが止まらなくてむせちゃったのよ。おじいちゃん家のお茶でそういうのに効くのがあるから、連れてってもらったのよ」
「なんだ、それだけかぁ」
「そう、それだけよ」
そう言うと、マキはふろしき包みとさっき屋台で買った食べ物の包みを持ち、ヒラヒラと二人に片手を振って「また、後でねぇ」と広場から出て行った。
後に残されたとサクとジュンはマキの背中を見送ると「うーん、まあいいか」と顔を合わせた。
そこに呑気なコウが「よう、ウナギとナマズが大漁だぞ」と両手に魚籠をぶら下げて帰って来た。

(つづく)

2014年5月14日水曜日

森の中46

(昨日のつづき)

「ちょっと落ち着くまで屋台の後ろの木箱に座ってなさいよ」
とマキはS子の手を引いた。S子はボンヤリと木箱に座りながら涙の細い糸を流れるままにしていた。S子は訳が分からなかった。三角の花のことも何も思い出せなかった。そのうちにスーと涙は止まった。S子は「ごめんなさいね」と屋台の表に戻った。パンの並んだ台は三角の花や葉っぱでキレイに飾り付けられていて、パンの香ばしい匂いが本当に美味しそうだった。S子のお腹がグウと鳴った。
「泣くとお腹空くわよね」
とマキがパンをひとつS子に渡した。
「ありがとう。なんだか、子供みたいで、イヤになるわ」
「懐かしくて泣くのって素敵なことじゃないの」
「そうかもしれないわね。あら、子供たちは?」
「ああ、お祭りだからね。そういう時って、子供は子供でいろいろあるのよ」
「ふうん、そうかもしれないわね」
「さて、私たちは、このパン全部売るのよぉ」
と言っているそばから、「まあ、いい香り。ねえ、このパンを3つ下さいな」と若い女の人が店先に立った。マキが女の人が持っているカゴにパンを3つ入れた。若い女の人は3枚の銅貨をマキに渡した。また直ぐに二人連れのおばさんがパンを5つ買い、銅貨を4枚マキに渡した。次にきたおじいさんはパンを2つ買って銀貨を1枚マキに渡した。その次にきた男の人はパンを8つ買って銅貨を5枚マキに渡した。どんどんお客さんが来て、どんどんパンが売れた。マキは言われるままにパンを渡して、差し出される硬貨を「ありがとう」と受け取った。その様子を手伝いながら見ていたS子は驚きながらマキに聞いた。
「ね、ねえ、マキさん、パンの値段って決まってないの?」
「ん?パンなんて食べる人が欲しいだけ持って行けば良いのよぉ。お金はお礼みたいなものじゃない。あ、でも、おじいちゃんとおばあちゃんの取っとかなくっちゃ」
マキはリンゴのパンとイチジクのパンとチーズのパンを2つずつ麻の袋に入れて笑った。S子はつられて笑った。その後もパンはどんどん売れて、あんなに沢山焼いたパンは昼過ぎにはひとつも残っていなかった。
「よし、全部売れたわっ。ああ、私たちもお腹空いたわね。私、そこらの屋台で何か買って来るから、S子さん、幟をたたんで休んでいてちょうだい」
マキはパンのお代が入ったカゴから、適当にお金をつかむと「直ぐ戻るわ」と広場の雑踏に紛れて行った。S子はパンがあっという間に売れたことが本当に嬉しく誇らしい気持ちがした。でも、沢山の人とやり取りをしたので、結構くたびれていた。幟を竿から外しながら、やれやれと大きく息をはいた。すると、後ろから「マキのパンはもうないのかな」とのんびりした声がした。
「ご、ごめんなさい、沢山あったのだけど、もうさっき売り切れちゃったんです」
とS子は振り向きながら答えた。そこにはとても年のいったおじいさんとおばあさんが立っていた。
「おや、それは残念だ。えーと、マキはどこへ行ったのかな?」
S子は「直ぐ戻ります」と言おうとしたが、またボワッと涙が溢れてきて、今度はざあざあと滝のように頬を流れだした。S子は吃逆をあげながらしゃがみ込んだ。「S子さーん、お待たせ」とマキが屋台に戻って来た。二人の老人がS子の背中をやさしく撫でている。
「おお、お帰り。パンはもう売り切れかね」
「あら、おじいちゃんにおばあちゃん、ええ、でも、二人のは取ってあるわ。それよりも、どうしたの? S子さん具合でも悪いの?」
「いや、わしらにも、よく分からんのじゃ」
マキは腰を落としてS子を覗き込んだ。S子は泣きじゃくりながら首を振った。

(つづく)

2014年5月13日火曜日

森の中45

(4月30日のつづき)

「お母さん、お花を貰って来たわ。おじいちゃんたち後でパン買いに来るって言ってった」
と息を切らしてチヨが言った。屋台に戻ると、エプロン姿のマキとS子も加わってパンを並べていた。二人が花をマキに渡すと横にいたS子が驚いた様子で赤い三角の花をマジマジと見つめている。
「ね、お母さん、すごくキレイな花でしょう。こんな三角の花なんて、私、始めて見たわ」
と言ったA子の言葉はS子の耳に届いてないみたい。ジッと花を見つめているS子の肩をマキがぽんぽんと叩いた。
「S子さん、どうしたの? この花が珍しい?」
マキにそう言われて、S子は我に帰ったように、ふうと息をはいた。
「ねえ、この花は何て言う名前なの?」
「え、名前は知らないわ。おじいちゃんに聞けば分かると思うけど、どうして?」
「この花を見るの始めてだと思うんだけと、何だか、とてもよく知ってるような気もするの。何だかとても懐かしい気がするの・・・」
「あら、そんなことよくあることだわ。きっと小さい頃に見た事があるのよ」
「うん、でも、やっぱり、きっと始めて見るわ。たぶん、私の勘違いだわ・・・」
と言いながら、S子の目に涙が溢れてきて、ツーツーと糸のように頬を伝って流れいる。
「S子母さん、どうしたの?」
「え、何が?」
「だって、涙が出てるわよ」
S子は顔を手で抑えた。
「やだ、なんで私泣いてるのかしら・・・」

(つづく)

2014年5月8日木曜日

「海・トンネル・猫」

一階部分がトンネルみたいになってるちょっと不思議なオシャレな家に住んでいる人から頼まれた絵がやっと描けたので、連休中に渡してきました。
その家にはペルシャ猫がいます。今いるのは2匹も入れて、これまでに7匹の猫と暮してきたそうです。ペルシャ猫はフワフワです。



2014年4月30日水曜日

森の中44

(昨日のつづき)

 それから、コウと子供たちでパンを広場の屋台に運んだ。たくさんの屋台が祭りの準備をしていて賑やかだ。「さあ、俺たちの屋台はあそこだぞ」とコウが指差した。パンを並べる竹で組んだ台があって〈マキのパン〉とパッチワークで作った幟が立っていた。広場の辺りや、そこに続く村のメイン通りは花やリボンで華やかに飾り付けられていた。広場の真ん中には竹で作った大きな三角の塔が立っていた。それを囲むように三面の舞台があって、楽器を準備している人たちが試しに音を出したりしていたし、派手なストライプの衣装のピエロとロバが赤い玉でお手玉の練習をしたりしていた。その様子を見てA子はウキウキしてきた。
「チヨちゃん、今日は本当にお祭りみたいね」
「そうよ、今日は本当にお祭りなのよ。お昼になったら、いろんな出し物もあるし、夕方にはダンスもあるわ」
と、やっぱりチヨもウキウキしている様子だ。
「あ、お父さん、待って。ダメよ、そのままパンを並べちゃあ」
と、チヨは持っていた袋から大きな黄緑色の布を広げた。
「なあ、どうせなら赤い布の方がいいんじゃないのか?」
「もう、父さん、分かってないなぁ。ここに赤い花や赤い葉っぱを飾るのよ。ちょっと、おじいちゃん家に貰いに行って来るわ」
「ふうん、そういうものか」
「もう、じゃ、直ぐ戻るから。行こう、A子ちゃん」
チヨはA子の手を取って広場を駆け出して行った。
「A子ちゃん、こっちよ」
チヨたちはメイン通りから細い路地を右へ左へと抜けて、畑の広がる場所に出た。
「この先に、おじいちゃんとおばあちゃんが住んでるの。ほら、あの家よ」
チヨとA子は畑の先の尖った屋根の家に向った。その家はツタで全部覆われていて家の形をした森みたい。
「ふふ、すごいでしょ。村の人は魔女の家なんていうのよ。でも、おじいちゃんも住んでるのに変よね」
家の前に着くとシワシワの背の低いおばあちゃんが玄関の前に水を撒いていた。
「おや、チヨ、おはようさん。そちらの子はお友達かい?」
「おばあちゃん、おはよう。うん、A子ちゃんっていうのよ。この村に引っ越してきたところよ」
「ほう、そうかい。頭の良さそうな子だ。で、チヨは花を取りに来たんだね。裏でおじいさんが摘んでるよ」
チヨとA子は裏庭のほうに回った。裏庭にはシワシワの背の高いおじいちゃんがいて、
「ほら、チヨの欲しいのは、これだろう」
と三角の赤い花と三角の赤い葉のついた枝を束ねたものを差し出した。
「さすが、おじいちゃん。私の考えてる事がよく分かるのねぇ。おとうさんなんか、ちっとも分からないのよ」
「ははは、そういうものじゃよ。コウだって、お前に子供が出来れば、孫の考えてる事ぐらい分かるようになるさ」
「ふふ、ホントかしら。そうは見えないわ、ね、A子ちゃん」
そう言いながら、三角の赤い花と三角の赤い葉のついた枝の束を受け取ると半分A子に持たせた。
「キレイだね。こんな花見た事ないわ」
「そうでしょう。おじいちゃんは植物を育てる天才なの」
「さあさあ、チヨにA子ちゃん、お前たち急いでるんだろう」
「うん、ありがとう。おじいちゃんたちも後でお祭り来るでしょう? 広場で母さんがパンの屋台を出してるわ」
「ほう、今年はパン屋か。それは楽しみだ。あとで買いに行くから美味しそうなのを見つくろっておいてくれ」
「うん。じゃあ、後でね。よし、広場に戻ろう、A子ちゃん」
と、またチヨはA子の手を取って駆け出した。

(つづく)